シングルクォーテーション(‘’/一重引用符)とダブルクォーテーション(“”/二重引用符)の使い分け
英語は世界共通語ですが地域によって少しずつ差があります。特に句読点や記号の用法などは微妙に異なるため、非英語圏の人には少しややこしいかもしれません。シングルクォーテーションとダブルクォーテーションのルールはその典型的な例です。アメリカ英語もイギリス英語も両方を使いますが、その使い方は異なります。この記事では、それぞれがどのように使われるかを解説します。
シングルクォーテーション(‘’/一重引用符)とダブルクォーテーション(“”/二重引用符)の違い
皆さんも、文章や言葉の引用、単語や重要事項の強調、タイトルの表示などにシングルクォーテーションやダブルクォーテーションが使われているのを目にしたことがあるでしょう。このクォーテーションマーク、実はどこの国でも同じルールに則って使われているわけではありません。アメリカ英語とイギリス英語では、表記ルールが異なるのです。例えば、アメリカ英語ではシングルクォーテーションの使用は非常に少なく、ニュースの見出しと、引用の中の引用という二つの例外を除いてほとんど使われません。引用中の引用とは、以下のような例です。
「ボブは私に『君の家族の集まりにはいかないよ』と言ったの。」
アメリカ英語では単純な引用、強調、皮肉、専門用語、タイトルを示す際にシングルクォーテーションは使用しません。シングルクォーテーションは、上の例のように、引用の中に引用を表す日本語の二重鍵括弧に相当する使い方や、ニュースの見出しの中での引用の場合にのみ使用します。ニュースの見出しの中でのシングルクォーテーションの使用はイギリス英語でも同様です。
一方、イギリス英語ではシングルクォーテーションが好まれ、ダブルクォーテーションは引用の中の引用を示すためにのみ使用されます。上の例文は、イギリス英語では次のような表記になります。
「ボブは私に『君の家族の集まりにはいかないよ』と言ったの。」
これは、イギリス英語とアメリカ英語のクォーテーションマークの使い方の違いの一例にすぎません。その他の用法を見てみましょう。
イギリス英語とアメリカ英語における違い
繰り返しますが、アメリカ英語ではシングルクォーテーションを使うことはほとんどなく、イギリス英語ではダブルクォーテーションを使うことはほとんどありません。下の表で例文を見てください。
タイプ |
アメリカ英語 |
イギリス英語 |
引用 |
Shakespeare said, “All the world’s a stage.” |
Shakespeare said, ‘All the world’s a stage’. |
引用内引用 |
He said, “Steve Irwin’s famous catch phrase was ‘Crikey!’” |
He said, ‘Steve Irwin’s famous catch phrase was “Crikey!”’ |
題名(テレビ番組、論文など) |
Have you seen that episode of Friends, “The One With The Rumor”? |
Have you seen that episode of Friends, ‘The One With The Rumor’? |
見出しの中の引用(ニュース) |
Bush says ‘Mission Accomplished’ |
Bush says ‘Mission Accomplished’ |
アメリカ英語とイギリス英語のクォーテーションの使い方のもう一つの違いは、句読点をどこに置くかということです。通常、アメリカ英語では句読点は引用符の中に入りますが、イギリス英語では句読点は引用符の外側に置かれます。ただしアメリカ英語でもコロンとセミコロンは例外です。また、アメリカ英語では疑問符や感嘆符は、それが引用の一部である場合にのみ引用符の内側に入ります。
句読点・感嘆符・疑問符 |
アメリカ英語 |
イギリス英語 |
ピリオド |
“All of the containers in the port exploded.” |
‘All of the containers in the port exploded’. |
カンマ |
“I just don’t think we can afford it this year,” sighed the president. |
‘I just don’t think we can afford it this year’, sighed the president. |
感嘆符 |
I can’t believe you’ve never heard “practice makes perfect”! |
I can’t believe you’ve never heard ‘practice makes perfect’! |
引用内の感嘆符 |
“Please stop singing!” he yelled to his mother. |
‘Please stop singing!’ he yelled to his mother. |
疑問符 |
Have you ever heard the saying “the perfect is not the enemy of the good”? |
Have you ever heard the saying ‘the perfect is not the enemy of the good’? |
引用尾内の疑問符 |
“Where are you going?” she asked. |
‘Where are you going?’ she asked. |
セミコロン/コロン |
It is true that my boss said “buy whatever you want”; however, I don’t think she meant a Ferrari. |
It is true that my boss said ‘buy whatever you want’; however, I don’t think she meant a Ferrari. |
クォーテーションマークのその他の用例
クォーテーションマークの使い方は他にもいくつかあります。一つ目は、次の例のように学術論文などで専門的な用語に使う場合です。
The new law defined “public diplomacy” as “the promotion of diplomatic relations by sharing our country’s culture, history, traditions, art, values, and policies through direct communication with foreign nationals.”
(新法では、「パブリック・ディプロマシー」を「外国との直接的なコミュニケーションを通じて、我が国の文化、歴史、伝統、芸術、価値観、政策などを共有し、外交関係を培うこと」と定義しています。)
上記はアメリカ英語の表記で、イギリス英語でも同じように、ダブルクォーテーションの部分をシングルクォーテーションにします。こうしたクォーテーションの使用は書き手が判断します。
また、クォーテーションマークは皮肉を表す場合にも使用されます。例えば
Women finally “achieved equality” after winning the right to vote in 1976.
(1976年に選挙権を獲得し、女性はついに“平等を達成した”。)
このクォーテーションマークは、書き手が「平等が達成された」と本当は考えていないことを表しています。
強調するために引用符が使われているのを見たことがあるかもしれません。しかしそうした引用符の使用は多くのネイティブスピーカーには強調でなく、皮肉として受け止められます。例えば
We “care” about our community!
(私たちは地域社会のことを "気にかけて"いる。)
上の例文は、「コミュニティのことは気にかけていない」と読み手解釈される可能性が高いです。こうした理由で、単語を強調する際は引用符ではなく下線や斜体、太字などが適宜使用されます。
クォーテーションを正しく使うには
研究者や学生の方でも、クォーテーション・マークを正しく使うためにできることがあります。まずは、自分がアメリカ英語で書いているのかイギリス英語で書いているのかを意識することです。投稿先に何らかのルールがあればそれを確認しておきましょう。
もうひとつは、オンラインのAI英文チェッカーのような便利なツールを活用することです。これは、どんな種類の文章を書く場合においても、その文法や句読点・記号などが正しいかを確認するのに役に立ちます。技術職や研究者、学生の皆さんは、学術論文やテクニカル・ライティングの専門用語や文法、句読点などのチェックに特化したTrinka(トリンカ)をぜひ一度お試しください。
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